平成29年5月 337号
自学自習の姿勢を、いかにして確立するか

 人間に生まれついての能力差はない。だが、努力した者としなかった者の違いは、君の人生に決定的な影響を及ぼす。
 大学の収容定員数が多すぎる。大卒に対する需要は、そんなに多くはないのだ。できれば、自分と同等、もしくは自分以上の人々で構成される集団に帰属したいものである。だが憶えておきたまえ。努力しなければ、君がこれまで経験したことのない低質な集団に帰属する可能性もあるのだ。普通の生活で、これまで経験したことのない、極めて水準の低い人々と、四年間、暮らさねばならなくなる可能性もある。幼稚園でも、小学校でも、勿論中学校、高等学校でも、経験したことのない低質な集団と共に生きねばならないのだ。人間は、別に優秀でなければならないわけではない。学力などなくとも、立派な人間はいくらもいる。学問がすべてではない。しかし、私立中学に学び、高等学校に学ぶ以上、大いに努力して、少しでも学習条件の良いところで学ぶ方が、君自身の人間的、学問的成長に資する事は、確実だ。
 自分の可能性に自信を持て。現在の学力に関係なく、君は確実に大成できる。
 大切なのは、自学自習の姿勢を確立する事だが、それも、割合簡単に取得できる。
 どうやって学ぶか。これが簡単ではない。矢張り、先輩や指導者、教師の助言が必要になるかも知れない。その点は、担任に相談するのが一番良い。校長室を訪れてくれても良い。自ら進んで、主体的、積極的に指導を求めることが大切だ。
 世界史の先生に教えられたが、世界史は、フランス革命以降から出題されるのが七割だそうである。日本史なら、関ヶ原の戦い以降ということになろうか。この範囲を、繰り返し繰り返し読み、かつ考えるのがよい。十回も読んだら、カードやサブノートにまとめて見るのも良いだろう。これは、中学一年生や、高校に入学した直後から積み上げて行くのが良い。世界史に関する面白そうな本を四、五冊買いためて、読んでみるのも良い。
 英語は大学入試の「二百三高地」である。でも、この克服は簡単だ。中学生にも関係があるから、しっかり読んで欲しい。
 高等学校のリーダーCROWNにはⅠ、Ⅱ、Ⅲの三冊がある。その中にⅠとⅡにはGrammarがある。だが、これがⅢにはないのだ。面白いね。つまりGrammarはⅠとⅡ、それぞれ10ページずつ、合計20ページで、英文法の基本的事項は尽くされてしまっているのだ。尽くされてしまっているからⅢには、これがない。ある意味でⅢは、「読み物」として構成されているとも言えるだろう。
 この20ページを、熟読、熟考、「眼光紙背に徹す」の構えで勉強すれば、英文法に分からないことはないことになる。私は、これをノートの左端に英文、右端に和文を書いて、暗誦すること、和文を見て英文を書き、和文を見て英文を朗唱することを繰り返せば、諸君の英語の底力は、ぐんと伸びると主張している。
 今ひとつ、センター試験も大学入試も、CROWNのⅠ、Ⅱさえ完璧にやれば、原理的には満点を獲得できる。入学試験でも、満点かどうかはともかく、確実に入試に合格できると確信している。
 中学生は、教科書を学ぶと共に、高校の分も先取りして学ぶと良い。
 余力があれば、中央図書館にも中学生専用図書館にも、比較的平易な英語の読み物が千冊以上用意されている。その中の、自分に相応しい物に目を通すと良い。電車の中で「原書」を読んでいたりしたら、かっこいいぞ。

科学的態度で健康を守れ
 肉 魚 野菜 果物を、バランス良く食べる事が大切だ。
 睡眠不足は万病の元、熟睡は日中の運動から生まれる。学校まで徒歩で通うというのは、何よりの健康法になる。
 風邪は万病の元、睡眠不足は風邪の最大の原因になる。
 部屋に陽光を導き込むことは何より大切。私は、寝室の窓は、必ずカーテンを開け、太陽が室内深くまで照らしてくれるよう努力している。校長室も同様だ。
 意外に忘れられやすいのは、湿度の維持である。状況によっては、加湿器を用いるのがよい。噴霧式の加湿器は駄目。カビが発生する。沸騰した湯気を吐き出すものが良い。私は、これを居間にも寝室にも用意し、メーターで、その日の湿度に神経質なくらい気を配っている。
 風呂上がりには、肘から先、膝から下に冷水をかける。私が風邪で寝込んだりしないのは、そのためもあるのではないだろうか。

知らない言葉に出会ったら辞書を引け
 語彙が貧困な者は尊敬されない。他人から侮られる。知らない言葉、不確かな言葉に出会ったら、必ず辞書を引け。今は、広辞苑をかついで歩かなければならない時代ではない。電子辞書には、広辞苑、英和辞典どころか、百科事典までついている。トラック一台分くらいの「文献」を、ポケットや鞄に忍ばせることができる時代なのだ。スマホなどで下らぬ遊びに時を費やしているときではない。寸暇を惜しめ。常に自らを向上させる姿勢を失うな。
 私の高校時代には、「自己完成」という言葉が、若者すべてに強く意識されていた。君も、自らを向上させることに、強い関心を持て。人生は短く、自らを完成させる道は遠い。限りある人生、決して長くはない青春だ。自らに厳しく学び続けよ。
 学習方法、読書方法については、いつでも私の所に相談に来て欲しい。

平成29年4月 336号
平成29年度入学式辞(要旨)

 入学おめでとう。
 高等部406人 中等部47人それぞれ難関を突破しての合格 入学を心から歓迎する。
 中等部は定数80人を下回る人数だが、今年は選考基準が六割を超えるという基準であったため、集まってくれた俊才の半数のみが合格できるという厳しい基準だったためである。
 高等部は、歴史と伝統が確立している中で、定数400を超える入学者となった。共に難関を突破してのご入学に心から敬意を表したい。中等部はこれからの六年間、高等部は大学入試を控えての三年間を、この学舎で過ごす事になる。人生で最も大切で思い出深い期間を、諸君と共に過ごす事ができる。我々教職員は、誇りと責任感を持って、諸君との学園生活を充実させて行きたいと思う。
 先ずスマホに支配されることのない学園生活を送って貰いたい。スマホのゲームに時を過ごすなどは論外である。スマホによる対話すら、極力、自粛して貰いたい。スマホの向こう側にいるのは、立派な人物であるとしても、ごく普通の人々である。教師と言えども、その例外ではない。
 活字を媒介として先哲と交われ。それが、入学劈頭、私が諸君に強くお願いしたいことである。
 読書とは、寂しい時に孤独を慰め、人生に迷ったときには、進むべき道をしっかりと示してくれるものだ。嫌になったらぱっと別れられるではないか。私が尊敬する菊池寛は、「文芸は、実人生の地理歴史」と語っている。生きる上で、最高の先生は活字なのだ。片々たる俗悪テレビなどに毒されてはならない。
 友情は美しいものではあるが、友情に頼り切ってはならぬ。深みのある孤独は、なまなかな友情に勝ると知れ。

 私は難関入試に合格して中学校に入学したとき、友人が一人もいなかった。校歌の一節に、「稲田につきの青き夕 友よ睦みて語らわん」という一節があった。夕方、二階の窓から外を見ながら、校歌を歌っていて、その一節まで来たときに、泣いていたものである。
 しかし、孤独を恐れるな。空に雲が流れ、風が木々の葉を揺すり、夜には天の川が広がる。人生は、それだけで生きるに値する。しかし、友は必ず現れるものである。友を獲得する上で一番大切なのは、自分以上に相手を大切にすること、もうひとつは、相手の求めや願いを受け入れられないときは、拒否の意思をはっきりと示すことである。寂しい時には教師を訪ねると良い。校長室にも来てくれると嬉しい。
 語学研修 修学旅行等で、外国に出ることも多い。イスラムゲリラの破壊活動が続き、高等部でも、フランス、イギリスへの旅行は難しくなった。安全なニュージーランド、ハワイ等を検討しているが、このような世界秩序の混乱は悲しいことである。
 しかし、恐れてはならない。諸君に確信を持って伝えておくが、ゲリラが正規軍に勝つ事は絶対にない。パレスティナ問題自身が、白人列強のエゴイズムから生まれたものなのであるが、これは入学後世界史の勉強で、しっかり研究して貰いたい。シリアのテロ集団は必ず覆滅するし、世界には再び安定した時代が戻ってくる。尖閣諸島に対する領土的野心を抱く近隣大国、朝鮮半島の軍事的圧力等も、世界の良識の中で必ず解決されるであろう。北方領土は千島樺太交換条約で獲得された日本固有の領土である。たとえ千年かかろうと、断じて取り返さなければならぬ。寸土を奪われて怒る事を知らぬ民族は、やがて本土をも失うのである。
 諸君は、将来確実に偉くなるであろうが、学問は己一人のためのものではない。その知性と力量は、国家、国民のために生かして行かなければならないのである。
 学校を休むな。朝起きて、「今日は行きたくないな」と思う日もあるかも知れぬが、それが、自己内面の弱さとの戦いである。怠け心を振り切って、学校へ向かわなければならぬ。三年間皆勤、六年間皆勤、これ以上に素晴らしい事は、世の中にはない。頑張ってくれ。
 本日のご来賓の皆様が、ご多忙の中式典に参加して下さった事を深く感謝申し上げる。
 保護者の皆様、お子様は確かにお預かりした。三年後、六年後に、見事に成長した姿でお返しすることをお約束する。
 学校は大組織であり、時にご迷惑をおかけすることもあるかも知れぬ。ご寛恕賜り、よろしくご協力下さる事をお願い申し上げる。
 また、五月頃になると思うが、PTA 後援会等の役員選出にも、よろしくご協力下さる事をお願い申し上げる。
 新入生諸君、自らに厳しく、己の可能性を最大限に活用するため、苦労を惜しまず闘い抜け。人間に生まれついての能力差などないのだ。

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